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PMP PMBoK 第6版を理解する 1.プロジェクトマネジメントの流れ
1.学習目標
✔ビジネスケースとは何か説明できる
✔ベネフィットマネジメント計画書とは何か説明できる
✔プロジェクト成功の指標について説明できる
✔組織体の環境要因と組織のプロセス資産の違いを説明できる
✔組織構造を説明できる
✔PMの権威について説明できる
2.ビジネスケース
各フェーズ(工程)でのベネフィットを確認して、プロジェクトの実現可能性の有無を検証するための評価指標となる文書のことです。
PMBOK®Guide p.30
ビジネスケースを確認して、プロジェクトの実現可能性が低い場合、プロジェクトが中断されることがあります。
プロジェクトの開始前に既に設定されていることが多いかと思います。
ビジネスケースの評価は、フェーズゲートにて行われます。
評価する主な内容
・未実施作業の有無
・次のフェーズ(工程)での計画の詳細化
・責任者の承認
ビジネスケースで文書化する内容
・組織に提供される価値
・対処すべき問題や好機を文書化したもの
・影響を受けるステークホルダーの特定
・スコープの特定
例えば、新しいシステムが構築されたことによって業務作業が自動化されて、人的コストを削減できる(好機)。しかしそれによって一部の人に不利益がでてしまう可能性もある(問題)。といった具体的なイメージをすると良いかもしれません。
・組織の戦略、目的の特定
・プロジェクトに必要な能力と既存の能力との差異分析
・既知のリスク特定
・重要成功要因の特定
何を持ってプロジェクトを成功とするのか、ベネフィットを生み出せているのかどうか、実際の成果物を納品してからでないとわからないこともあるかと思います。
例えば、現在のエンジニアの能力と実現したいシステムの構築難易度に大きな乖離がある場合、それがリスクになり得るかと思います。また要件が具体的にまだ定まっていないため、スケジュールに遅れが出るかもしれない、これもリスクになり得るかと思います。
3.プロジェクトベネフィットマネジメント計画書
プログラムレベルで管理され、ベネフィットを測定する時期と評価方法や戦略を定義した計画書のことです。
PMBOK®Guidep.33
計画書に含まれる内容
・戦略の整合性
・ベネフィット実現の時間枠(長期のベネフィット)
・ベネフィットオーナー(責任者)
・評価尺度(評価指標、どうのように評価するか)
この計画書に記載されている手法を用いて、ビジネスケースを評価します。
4.プロジェクト成功の指標
- プロジェクトベネフィットマネジメント計画書が完成する。
- ビジネスケースに文書化されている財務指標(ROI、回収期間など)、非財務目標を満たす。
- 組織戦略、目標を満たす
- 契約条件を満たす
- ステークホルダーの実現を満たす
PMBOK®Guide p.34, 35
5.組織体の環境要因と組織のプロセス資産の違い
各プロセスのインプットに組織体の環境要因と組織のプロセス資産がありますが、以下に違いを示します。
5.1組織体の環境要因
もともとその組織に存在するもので、プロジェクトを管理し抑圧し影響を与える状況のこと。またプロジェクトの成功に影響を与える外的要因または内的要因。
・利用可能な資源、従業員の能力
・市場の状況
・国家標準または業界標準
PMBOK®Guide p.38
例えば、外的要因であれば、javaやwordpressなどのセキュリティ脆弱性によりバージョンアップをしないといけないなどがあるかと思います。
内的要因であれば、どの従業員がプロジェクトに適切か、またプロジェクトにアサイン可能かどうかなどがあるかと思います。
5.2組織のプロセス資産
プロジェクトを通して得られた知見、資産など。
以下のようなものが含まれます。
・テンプレート
・変更管理手続き
・過去の情報
・過去のプロジェクトからのプロジェクトファイル
PMBOK®Guide p.39, 40
例えば、組織で持っている契約書や設計書などのテンプレートを利用したり、過去のWBSを参考にしてWBSを作成するなど。
6.組織構造
機能型、プロジェクト型、マトリクス型の他に、仮想型、ハイブリッド型があります。
組織構造 | どう手配? | PMの権限 | PMの役割 | リソース | 予算管理者 | メンバー |
機能型 | 職種(部門) | なし | 兼任 | なし | 機能部門マネージャー | 兼任 |
プロジェクト型 | プロジェクト | 高~全て | 専任(フル) | 高~全て | PM | 専任(フル) |
強いマトリクス型 | 役職(機能) | 中~高 | 専任(フル) | 中~高 | PM | 専任(フル) |
弱いマトリクス型 | 役職(機能) | 低 | 兼任 | 低 | 混在 | 兼任 |
バランス型 | 役職(機能) | 低~中 | 兼任 | 低~中 | PM | 兼任 |
バーチャル型 | ネットワーク構造 | 低~中 | 専任 or 兼任 | 低~中 | 混在 | 専任 or 兼任 |
ハイブリッド型 | 他のタイプの混在 | 混在 | 混在 | 混在 | 混在 | 混在 |
6.1機能型
機能型に縦割りされた組織。
プロジェクト管理には分離型の手法が取られ、各機能部門を通して、プロジェクト業務だけが流れてきます。
設計部で設計書を作成して、製造部がそれを受けて、製造するという形式です。
長所:各業務における専門性が強くなる。従来の資源を利用しやすい。
短所:意思決定が遅延しがち。PMの権限がない。機能部門長の指示を仰ぐ必要がある。
6.2プロジェクト型
機能型組織とは、全く対局にある組織形態。
プロジェクトチームは母体組織の中では独立した組織となり、PMには強い権限と独立性があります。
長所:意思決定が早い。権限や責任体制が明確。メンバーのやる気を高めやすい。
短所:プロジェクト解散後、メンバーが不安に陥りやすい。知識の蓄積がしづらい。メンバーを集めづらい。
6.3マトリクス型
マトリクス型は機能型とプロジェクト型の中間組織です。
強いマトリクス、弱いマトリクス、バランス型の3つがあります。
メンバーは機能部門マネージャーとPMの両方に報告を求められる場合があります。
・強いマトリクス型組織
プロジェクト型に近い。PMたちの所属する部署があります。
PMOが存在する場合が多い。
・弱いマトリクス型組織
機能型に近い。各部門からメンバーとPMが決定されます。PMの役割はコーディネーター(coordinator 調整役)の役割がメインとなります。
・バランスマトリクス型組織
強いマトリクスと弱いマトリクスの中間。
PMBOK®Guide p.45, 46, 47
7.プロジェクトマネージャー(PM)
PMBoKでのPMの定義とPMの権威について見ていきます。
7.1PMの定義
プロジェクトマネジャー(PM)は、プロジェクト目標を達成することに責任をもつチームをリードするために、母体組織が任命する人物のことです。PMはプロジェクトの目標とステークホルダーの期待に応えるように、プロジェクトで利用可能な資源と競合する制約条件とのバランスを維持することが求められます。
PMがプロジェクトを進行させる上で、チームやスポンサーたちと積極的なコミュニケーションが必要になります。
PMBOK®Guidep.52
7.2PMの権威
- 罰を与える権威:チームメンバーに罰を与えることで、PMとして権威を確立する
- 専門的権威:PMに特殊なスキルの備わっている時に、周囲から認められる権威。PMではなくとも持つことができる権威。
- 合法的権威:役職が与えられたことによる権威。プロジェクトの立上げで利用できる権威。
- 参照的権威(後ろ盾):プロジェクトメンバーから人間性等を考慮し、PMとして認められる権威。
PMBOK®Guidep.62
8.まとめ
- ビジネスケースはプロジェクトの実現可能性の有無を検証するための評価指標となる文書。
- フェーズゲートでビジネスケースの評価が行われる。
- ビジネスケースには、ビジネスニーズや状況分析が含まれる。
- ベネフィットマネジメント計画書はベネフィットを測定する時期と評価方法や戦略を定義した計画書。
- 組織体の環境要因には、外的要因と内的要因がある。
- 組織のプロセス資産は、過去のプロジェクトなどで得られた知見、資産などが含まれる。
- 組織構造には、主に機能型、プロジェクト型、マトリクス型がある。
- PMは母体組織により任命され、プロジェクト目標を達成する責任がある。
- PMの権威には、罰を与える権威、専門的権威、合法的権威、参照的権威がある。
今回もPMBoKの概要部分になりますが、ビジネスケース、ベネフィットマネジメント計画書の内容、組織体の環境要因の組織のプロセス資産の違い、各組織構造の特徴、PMの定義と権威について抑えて頂ければ幸いです。
以上になります。お疲れ様でした!