PMP PMBoK 第6版を理解する 6.コストマネジメントについて

PMBOK6th-editionPMP

前回の記事についてはこちら
PMP PMBoK 第6版を理解する 5.スケジュールマネジメントについて

学習目標

・コストマネジメント全体を説明できる
・マネジメント予備とコンティンジェンシー予備の違いについて説明できる
・EVAについて説明できる
・予測について説明できる
・TCPI 残作業効率指数について説明できる

7.コストマネジメントの全体について

7.コストマネジメントインプットツールと技法アウトプット
7.1コストマネジメントの計画・プロジェクト憲章
・プロジェクトマネジメント計画書
・会議・コストマネジメント計画書
7.2コストの見積もり・プロジェクト文書
・コストマネジメント計画書
・類推見積
・パラメトリック見積
・ボトムアップ見積
・三点見積
・データ分析
・コスト見積
・見積もりの根拠
7.3予算の設定・プロジェクト文書
(コストの見積)
・コスト集約
・データ分析
・コスト・ベースライン
7.4コストのコントロール・プロジェクトマネジメント計画書
・作業パフォーマンスデータ
・データ分析(EVA)・変更要求
・コスト予測
・作業パフォーマンス情報

【プロジェクトコストマネジメントは、プロジェクトを承認済みの予算内で完了するための、計画、見積り、予算化、資金調達、財源確保、マネジメントおよびコントロールのプロセスからなる。】PMBOK®Guidep231

7.1 コストマネジメント計画

プロジェクトマネジメント計画と同時並行。
プロジェクトコストを見積もり、予算化し、マネジメント・監視、コントロールする方法を定義するプロセスです。

インプット

・プロジェクト憲章(事前承認された財源:制約条件)
・プロジェクトマネジメント計画書(未完成)

ツールと技法

・会議

アウトプット

・コストマネジメント計画書(測定単位、コントロールしきい値、パフォーマンス測定値の規則)

例えば、パフォーマンス測定値の規則であれば、EVを測定する場合に、タスク完了で60%、内部レビュー完了で80%、外部レビュー完了で100%とするなど。

7.2 コストの見積もり

プロジェクト作業を完了するために必要な資源コストを概算するプロセスです。
※6.4 アクティビティ所要期間の見積もりプロセスと同時並行。

インプット

・プロジェクト文書(所要期間と資源の情報が含まれる)
・プロジェクトマネジメント計画書
-スコープ・ベースライン
-コストマネジメント計画書

ツールと技法

・類推見積:迅速 に見積を算出することができますが、見積精度は高くありません。
・パラメトリック見積:過去のデータとその他の変数を利用する見積技法です。 
・3点見積:最可能値・楽観値・悲観値を使用する見積技法です。
・ボトムアップ見積:精度は高いが、見積を算出するのに時間がかかります。見積精度は高いです。
※4つの見積もり技法については、スケジュールマネジメントでも記載しています。
・データ分析
コンティンジェンシー予備
予算の予備。PMが管理。既知の未知に備えるもの。
(
PMBOK®Guide p202・・・スケジュールの予備)PMBOK®Guidep245

コンティンジェンシー予備とは、プロジェクトに影響を与える”既知の未知”【既知の不測事態( known unknowns )】を処理するための予備金額技法です。

アウトプット

・コスト見積:各アクティビティを完了させるために必要なコスト見積もり額
・見積の根拠:アクティビティを完了させるための見積もり根拠。

7.3 予算の設定プロセス

予算の設定プロセスは 、各アクティビティを完了するために必要な 予算を集約して、コストベースラインを設定するプロセスです。
※スケジュールの作成が終わったあとに予算の設定を行います。

インプット

・プロジェクト文書(コスト見積)

ツールと技法

・コスト集約:ワークパッケージごとに集約し、コントロールアカウントごとで集約し、最終的にはプロジクトとしてまとめます。

・データ分析
マネジメント予備
PMの範疇外。スポンサーが管理する予算。未知の未知に備えるもの。

コストベースラインの変更はCCB(変更管理委員会)での承認が必要です。

アウトプット

・コストベースライン

PMBOK®Guidep.255

7.4 コストのコントロール

構造は他のコントロールプロセスと一緒。
プロジェクト・コストを更新するためにプロジェクトの状況を監視し、コスト・ベースラインの変更をマネジメントするプロセス。

インプット

・プロジェクトマネジメント計画書(計画値)
・作業パフォーマンスデータ

ツールと技法

・データ分析(EVA)
 PV:測定時点までにこれから行う作業に割り当てた予算(作業量)
 EV:完了した作業に割り当てた予算(作業量)
 AC:実際に使用したコスト(作業量)実績値

 SPI(スケジュール効率指数):EV/PV 作業が終われば1になる。
 CPI(コスト効率指数):EV/AC 一番重要な評価指標。1にはならない。

以下の例を参考にしていきます。

実際に作業実績の進捗(EV)と作業コスト(AC)を確認します。

上記の例の場合、作業は遅延して、コストは超過していることがわかります。

残作業のコスト見積もり ETC(Estimate To Complete)
ETC=(BAC-EV)/CPI  または (BAC-EV)
残作業のコスト見積もり(ETC)から、予測(どの程度作業量が必要か)を求めることができます。
CPI(コスト効率指数)のみを考慮した場合
ETC/CPI = 300/0.8 = 375人月

※SPI(スケジュール効率指数)が芳しくない場合、SPIも考慮すると
ETC/(SPI×CPI) = 300/(0.66×0.8) = 568人月
つまり、プロジェクトの残作業は、300~568人月の間で終了すると予測できます。

残作業効率指数 TCPI(To complete Cost Performance Index)
プロジェクトを完了するために必要なコスト効率を表し,ETC の妥当性の判断に役立つ数値です。
TCPI= 残作業/残資金
BACが実現可能・・・TCPI = (BAC-EV)/(BAC-AC)
BACが実現不可・・・TCPI = (BAC-EV)/(EAC-AC)

完成時総コスト見積りEAC(Estimate At Completion)
実コスト(AC)にETCを足した値で、BACより精度が高いプロジェクト全体の予算数値になります。
EAC・・・完成時総コスト見積。AC+(BAC-EV)/CPI または  AC+ETC
VAC・・・完成時差異。BAC-EAC

アウトプット

・変更要求
・コストの予測
・作業パフォーマンス情報

まとめ

  • プロジェクトを承認済みの予算内で完了するための、計画、見積り、予算化~コントロールの方法を定義する。
  • マネジメント予備は、PMの管轄外。CCBでの承認が必要で、コストベースラインが変わる。
  • コンティンジェンシー予備は、予算内でPMが使うことができる予備予算。
  • 残作業のコスト見積もりから、残りの作業に必要な作業量を予測できる。
  • SPIが1より小さい場合、遅延。CPIが1より小さい場合、コスト超過。
  • TCPIはBACが実現可能か、実現不可能かで求める計算式が異なる。
  • EACはACにETCを足した値で、BACより精度が高い。

今回はコストマネジメントの各プロセスについて見ていきました。
EVAについては試験対策上でも重要箇所なので、数値の意味を理解して、またEVとは何かといった意味や定義を抑えておくことをおすすめいたします。

以上になります。お疲れ様でした!



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