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PMP PMBoK 第6版を理解する 4.スコープマネジメントについて
学習目標
・スケジュールマネジメントの全体を説明できる
・アクティビティプロセスのツールと技法について説明できる
・アクティビティ順序設定プロセスのツールと技法について説明できる
・4つの見積もり技法について説明できる
・スケジュール作成プロセスのツールと技法について説明できる
6.スケジュールマネジメントの全体
6.スケジュールマネジメント | インプット | ツールと技法 | アウトプット |
6.1スケジュールマネジメントの計画 | ・プロジェクトマネジメント計画書 ・プロジェクト憲章 | ・会議 ・データ分析 | ・スケジュールマネジメント計画書 |
6.2アクティビティの定義 | ・プロジェクトマネジメント計画書 | ・要素分解 ・ローリングウェーブ計画法 | ・アクティビティリスト ・マイルストーンリスト ・アクティビティ属性 |
6.3アクティビティの順序設定 | ・プロジェクト文書 | ・プレジデンスダイアグラム法 ・リードとラグ | ・プロジェクトスケジュールネットワーク図 |
6.4アクティビティ所要期間の見積もり | ・プロジェクトマネジメント計画書 ・プロジェクト文書 | ・類推見積 ・パラメトリック見積 ・三点見積 ・ボトムアップ見積 ・データ分析 | ・所要期間見積もり ・見積もりの根拠 |
6.5スケジュールの作成 | ・プロジェクトマネジメント計画書 ・プロジェクト文書 | ・クリティカルパス法 ・資源最適化 ・データ分析 | ・プロジェクトスケジュール(スケジュールベースライン) |
6.6スケジュールのコントロール | ・プロジェクトマネジメント計画書 ・作業パフォーマンスデータ | ・データ分析 | ・変更要求 ・作業パフォームマンス情報 |
スケジュールマネジメント計画書の作成→アクティビティの定義→アクティビティの順序設定→(9.2 アクティビティ資源の見積もり)→アクティビティ所要期間の見積もり→スケジュールの作成→スケジュールのコントロール
6.1 スケジュールマネジメントの計画プロセス
スケジュールに関する計画書を作成するプロセスです。
インプット
・プロジェクト憲章(要約マイルストーンスケジュール→マスタースケジュール)
・プロジェクトマネジメント計画書(未完成のもの)
ツールと技法
・会議
・データ分析(ローリングウェーブ計画法などの手法が含まれます)
アウトプット
・スケジュールマネジメント計画書
測定基準、開発・監視するアクティビティやスケジュールのコントロールについて規定した計画書。
6.2 アクティビティの定義プロセス
成果物を生成するために遂行すべき具体的な行動を特定し文書化するプロセスです。
WBSのWPをベースに、アクティビティリスト、アクティビティ属性、マイルストーンリストを定義します。
インプット
・プロジェクトマネジメント計画書
(スケジュールマネジメント計画書、スコープベースライン、WBSのWP)
ツールと技法
・ローリングウェーブ計画法
早期に完了しないといけない作業は詳細に、将来の作業は上位のレベル’で計画します。
・要素分解:WBSのWPを、スケジュールアクティビティに要素分解をします。
アウトプット
・アクティビティリスト:スケジュールアクティビティ(計画されたタスク)のリスト
・マイルストーンリスト:マイルストーンは所要期間が0
(ある文書の完成、作業の開始など)
・ アクティビティ属性
WP内に3つのアクティビティがある場合、3つのスケジュールアクティビティの詳細を示す文書が存在します。
※初期段階:識別子(ID),アクティビティの名前が含まれます。
最終的には、アクティビティ記述、先行,後続アクティビティ、論理的順序関係、リードとラグ、資源要求事項、指定日、制約条件、前提条件が含まれます。
PMBOK®GuideP.186
6.3 アクティビティの順序設定プロセス
作業の順序を決定するプロセス。(依存関係の設定)
インプット
・プロジェクト文書
(アクティビティリスト、マイルストーンリスト、アクティビティ属性)
ツールと技法
・依存関係の設定
–強制依存(ハードロジック):作業の性質上内在する依存関係(例:設計の後に構築する)
–任意依存(ソフトロジック):過去のベストプラクティス(成功事例)の知識に基づいている
(例:アドバイス)
–外部依存:プロジェクトチームの管理外との依存関係
(例:建設工事前に政府公聴会に出席しないといけない)
–内部依存:プロジェクトチームの管理内での依存関係
(プロジェクトチーム内で管理できるもの)
※内部依存=メンバーが作業を行う / 強制依存=機械を組み立ててからテストをする
・リードとラグ
-リード:後続アクティビティの迅速化
無理ではない作業の同時平行。AとBに依存関係がない。リスクがない。
※ファストトラッキング:無理な作業の同時並行(リスクあり)
-ラグ:後続アクティビティの遅延
・プレジデンスダイアグラム法:一般的な順序設定方法
-FS(終了 – 開始)・・・間が空いてもいい
-SF(開始 – 終了)・・・間を空けない
アウトプット
・プロジェクトスケジュールネットワーク図(WPごとの)
6.4 アクティビティ所要期間の見積もりプロセス
想定した資源を持って、作業期間を見積もるプロセス。
「9.2 アクティビティ資源の見積もりプロセス」がこのプロセスの前に終わっています。
インプット
・プロジェクトマネジメント計画書
・プロジェクト文書
(資源の情報、スケジュール・・アクティビティの情報が含まれます)
ツールと技法
・類推見積もり:過去のデータを使用して、プロジェクトやアクティビティの所要期間を見積る技法
※他の見積もり技法よりも、安価で時間もかからないが、正確さも劣る。
・パラメトリック見積もり:かけ算を使用して見積る技法
(FP:ファンクションポイント法などがあります。例:登録機能なら5日)
PMBOK®GuideP.201
・ボトムアップ見積もり:下位レベルの構成要素単位の見積りを集計してプロジェクトの所要期間を見積る技法
・三点見積もり:3種類の所要時間見積りの平均(もしくは加重平均)を算出する方法
※過去の状況を知っている管理者から、3つの値を聞き出す。
悲観値:最長の値, 最頻値(最可能値):一番可能性の高い値, 楽観値:最短の値
・予備設定分析(コンティジェンシー予備、マネジメント予備)
※スケジュールだけの分析
(7.2 は同時並行で進んでいく)
アウトプット
・所要期間の見積もり
・見積もりの根拠
→1WP内のスケジュールが完成したことになります!
6.5 プロジェクトスケジュール作成プロセス
プロジェクト全体のスケジュールを作成するプロセス。
(WPごとのスケジュールを1つに統合する。)
インプット
・プロジェクト文書
(アクティビティ属性とリスト、所要期間見積もり、資源カレンダー、資源要求事項)
・チームの任命
・WPごとのネットワーク図
ツールと技法
・クリティカルパス法
資源に関する制限を考慮せず、スケジュールアクティビティの理論的な最早開始日(ES)、最遅開始日(LS)、最早終了日(EF)、最遅終了日(LF)を計算する方法
※クリティカルパス:作業の最長経路。作業の開始から終了をつなぐ時間的余裕(フロート)のない一連の作業経路。
上記の例の場合、A + C + D = 5 + 10 + 15 = 30日
※フロート・・・経路上の余裕。LS-ES または LF-LS から求められる。
上記の例の場合、Bがクリティカルパス上にないため、11 – 6 or 15 – 10 = 5日
※バッファ・・・各アクティビティの中に設定されるリスクに対しての予備の日数
・クリティカルチェーン法・・・限られた資源を有効に利用する方法。
バッファーとバッファマネジメントの概念を導入していると言われています。
各アクティビティにバッファを設定していないことが前提。
→人間的心理(学生症候群、パーキンソンの法則)を解消するため。
-プロジェクトバッファ:これがなくなった場合、プロジェクトは遅延しています。
・資源最適化
※資源平準化(Resource Leveling):山積み→山崩し。作業を均等化します。作業工数が減少する訳ではないため、作業スケジュールが長期化します。
※資源円滑化(Resource Smoothing):クリティカル・パスを変更させることがなく、フロートの中で資源の上限を超えた作業をするスケジュール修正方法。
・データ分析
–What-If シナリオ分析:現時点で考えられるシナリオに合わせて、いくつものパターンでスケジューリング を行う方法。
プロジェクトの所要期間を何通りも計算します。
–シミュレーション(モンテカルロ分析):確率分布上で妥当なスケジュールを検討します。
モンテカルロ法は、確率計算をする際に用いられる手法の1つで、統計学の分野でも出てきます。計算精度を上げるために、より多く確率計算を(試行)する必要があります。
・スケジュール短縮
–クラッシング:短縮したい作業に、最小の資源を追加して、該当する作業の予定所要期間を短縮化する方法。コストが増加します。
–ファスト・トラッキング:未完成の結果を利用して、次作業を並行して実施すること。手直し、手戻りのリスクが増大します。
アウトプット
・スケジュール・ベースライン:プロジェクト全体のスケジュール
(PMが承認した結果のこと)
・プロジェクト・スケジュール:
すべてのWPのデータを統合して、完成したプロジェクト全体のスケジュール。
※例)MS Projectなどでタスクの前後依存関係が時間軸付きでわかるスケジュール
PMBOK®GuideP.219
6.6 スケジュールのコントロール
スケジュールに関する予実の差異を分析して、変更要求を提案するプロセス。
(計画通りに作業が進んでいるかどうか定期的にチェック)
インプット
・プロジェクトマネジメント計画書
・作業パフォーマンスデータ
ツールと技法
・アーンドバリュー分析:スケジュール差異(SV)やSPIを算出して評価します。
・イテレーションバーンダウンチャート:スケジュールのコントロールプロセスで使用され、イテレーションのバックログの中で完了しなければならない作業を追跡するために、利用する手法。
縦軸に残作業、横軸に日数をとり、理想線(直線)からどれくらい上下に離れているか分析するのに役立ちます。理想線より実残作業が上の場合、遅れていて、理想線より下の場合、進んでいることになります(予定よりタスクを消化できている)。
アウトプット
・変更要求
・作業パフォーマンス情報
まとめ
- 測定基準、開発・監視するタスクやスケジュールのコントロールについて規定した計画書を作成する。
- ローリングウェーブ計画法や要素分解を用いて、アクティビティを定義する。
- アクティビティの依存関係を考慮して、またPDMを用いてプロジェクトスケジュールネットワーク図を作成する。
- 4つの見積もり技法から、所要期間の見積もりと見積もりの根拠を求める。
- ネットワーク図とクリティカルパス法などからプロジェクト全体のスケジュールを作成する。(スケジュール・ベースライン)
- 監視プロセスにて、予定通りに作業が進んでいるか定期的にチェックする。
今回は6章のスケジュールマネジメントについてまとめてみました。
4つの見積もり技法やクリティカルパス法を用いた計算問題は2~3問程度と多くは出題されないものの、必ず出題されます。計算ミスをせず、確実に抑えられるようにしましょう。
以上になります。お疲れ様でした!