PMP PMBoK 第6版を理解する 4.スコープマネジメントについて

PMBOK6th-edition PMP

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PMP PMBoK 第6版を理解する 3.統合マネジメントについて

学習目標

・スコープマネジメントの全体を説明できる
・要求事項収集プロセスの働きやポイントを説明できる
・プロジェクトスコープ記述書について説明できる
・WBSについて説明できる
・スコープの妥当性確認プロセスの働きやポイントを説明できる

5.スコープマネジメントの全体について

5.スコープマネジメント インプット ツールと技法 アウトプット
5.1スコープのマネジメント計画 ・プロジェクトマネジメント計画書(未完成)
プロジェクト憲章(ハイレベルの要求事項)
・会議 ・スコープマネジメント計画書
・要求事項マネジメント計画書
5.2要求事項の収集 ・プロジェクト憲章(ハイレベルの要求事項)
・プロジェクト文書(ステークホルダー登録簿)
・データ収集(インタビュー、フォーカスグループ)
・データ表現(親和図)
・ノミナルグループ技法
・要求事項文書(要求事項を一覧化)
・要求事項トレーサビリティマトリクス(要求事項を追跡)
5.3スコープの定義 ・プロジェクト憲章
・プロジェクトマネジメント計画書
・プロジェクト文書(要求事項文書が記載)
・データ分析:妥協案を設定
・プロダクト分析:抽象的なことを具体的にする考え方
・プロジェクトスコープ記述書
5.4WBSの作成 ・プロジェクトマネジメント計画書(プロジェクトスコープ記述書) ・要素分解 ・スコープベースライン(WBS、WBS辞書、プロジェクトスコープ記述書) 
5.5スコープの妥当性確認 ・検証済み成果物(品質のコントロールプロセスのアウトプット) ・検査(ユーザテストや本番環境でテスト)
・意思決定(全員の合意を得るため)
・受け入れ済み成果物
・変更要求(欠陥修正のみ)
5.6スコープのコントロール ・プロジェクトマネジメント計画書(計画値)
・作業パフォーマンスデータ(実績値)
・差異分析
・傾向分析
・変更要求
・作業パフォーマンス情報(スコープのみ)
★流れ
スコープのマネジメント計画→要求事項の収集プロセス→スコープの定義プロセス→WBS作成プロセス→(時間的にかなり開く)→スコープのコントロールプロセス→スコープの妥当性確認プロセス

「5.1スコープのマネジメント計画」
・どのように進めていくかガイドラインを決めていく
※4.2プロジェクトマネジメント計画書の作成プロセスと同時並行

「5.2要求事項の収集プロセス」
・ステークホルダーのニーズや要求を特定し、文書化

「5.3スコープの定義プロセス」
プロジェクトおよびプロダクトに関する詳細な記述書を作成(成果物を定義)

「5.4WBS作成プロセス」
・プロジェクトスコープ記述書に記載している成果物を元にWBSを作成

6.2アクティビティの定義プロセス
アクティビティ(タスク)を明確化

「5.6スコープのコントロール」プロセス ※定期的に行われる
・スコープを確認し、当初の予定通り作業が進んでいるかを確認
※スコープだけに着目

「5.5スコープの妥当性確認プロセス」
・完成した成果物を正式に受け入れるプロセス

5.1スコープマネジメントの計画

スコープマネジメントに含まれるプロセス(要求事項の収集~スコープコントロール)の進め方を計画立て、スコープマネジメント計画書、要求事項マネジメント計画書を作成するプロセスです。

インプット

・プロジェクトマネジメント計画書(未完成)
・プロジェクト憲章

ツールと技法

・会議

アウトプット

・スコープマネジメント計画書

-プロジェクト・スコープ記述書を準備するプロセス
(スコープの定義プロセス)

-詳細なプロジェクト・スコープ記述書からWBSの作成を可能にするプロセス(WBSの作成プロセス)
-スコープ・ベースラインを承認し保持する方法を確立するプロセス
(WBSの作成プロセス)

-完成した成果物の公式な受け入れ方法を規定するプロセス
(スコープの妥当性確認プロセス)

・要求事項マネジメント計画書
要件定義の方法について記述した計画書
-要求事項に関する活動の計画、追跡、および報告の方法
-変更の起案方法、変更の確認・追跡・報告等の方法 等

5.2要求事項の収集プロセスの働き

ステークホルダーのニーズや要求を特定し、文書化します。
PMBOK®Guide p.138

インプット

・プロジェクト憲章(初期段階の要求事項)
・プロジェクトマネジメント計画書
 -スコープマネジメント計画書
 -要求事項マネジメント計画書
 -ステークホルダーエンゲージメント計画書
(コミュニケーション要求事項や格ステークホルダーの関与度の情報)

・プロジェクト文書(ステークホルダ登録簿)
※ステークホルダ登録簿には、評価情報(assessment information)を記載
   プロジェクトへの期待や要求事項。意見を集める、意見をまとめる。

ツールと技法

・データ収集(ブレーンストーミング、インタービュー、フォーカスグループ)
※インタビュー(不特定多数、制限はなし)とフォーカスグループ(専門家)は聞き出す対象が異なる
・意思決定:聞き出した意見をまとめる。
  -満場一致、過半数、相対多数
・データ表現(意見をまとめる方法)
  -親和図:多数のアイディアをグループ分けする。
(ブレーンストーミングの可視化手法の1つ)

KJ法

  -マインドマップ法

・ノミナルグループ技法:合意形成(意思決定)の手法。

 投票プロセスを加えて、ホワイトボードに書き出しレビューし、優先順位をつける。

・コンテキストダイアグラム:スコープモデルの例。
システムとアクターがどのように相互作用するかを視覚的に表現。

PMBOK®Guide p.146 図参照

・プロトタイプ:実際のプロダクトが完成する前に期待されるモデルを提供。

例)AdobeのXDなどを利用して、画面のデザインと遷移がわかるようにする。

★ツールと技法の整理
要求事項文書を作成するために
①データ収集をする(ブレーンストーミングなどで意見を集める)

②データを分類する

③分類した意見に優先順位をつける

アウトプット

・要求事項文書(要求事項を一覧化したもの)
成果物に関する内容(ソリューション要求事項)、成果物に直接関わらない内容(ビジネス要求)をまとめた文書です。

-ビジネス要求事項(母体組織からの要求)
-ステークホルダー要求事項(あらゆるステークホルダーからの要求)
-ソリューション要求事項(機能要求事項、非機能要求事項などの成果物に関する要求)
-移管および準備状況への要求事項 等

・要求事項トレーサビリティーマトリクス:要求事項を追跡する確認表
PMBOK®Guide p.149 図参照

5.3スコープの定義プロセス

作業範囲と成果物を定義して、プロジェクトスコープ記述書を作成します。

インプット

・プロジェクト憲章
・プロジェクトマネジメント計画書
・プロジェクト文書(要求事項文書が記載)

ツールと技法

・データ分析:代替案分析・・・妥協案を設定
・プロダクト分析:(抽象的なことを具体的にする考え方)
  ハイレベルの成果物を理解できる成果物に置き換える方法

アウトプット

・プロジェクトスコープ記述書
※プロジェクトスコープ(作業)とプロダクトスコープ(成果物)を文書化したもの

-前提条件:実証されない真実。時間の経過とともに変わる可能性あり
-制約条件:3大制約(スコープ、タイム、コスト)
-プロダクトスコープ記述書
-成果物
-受入基準
-プロジェクトからの除外事項

※作業範囲:前提条件、制約条件、プロジェクトからの除外事項

5.4WBSの作成

WBSの目的とは、作業を計画し、マネジメントし、監視コントロールを行いやすくするようにするために、プロジェクト・スコープ記述書で定義された成果物をベースにて、成果物を構成する構成要素を定義することです。

インプット

・プロジェクトマネジメント計画書(プロジェクトスコープ記述書が含まれる)
・プロジェクトスコープ記述書に記載している成果物を元に作成する

ツールと技法

・要素分解

1.成果物と関連する作業の特定と分析
2.WBSの構造化と組織化
(プロジェクトの作業を整理して、WBSの形を決める)

3.構成要素レベルへの要素分解
4.識別コードの作成と割り当て
5.構成要素が明確であるかを検証

上位レベルのWBSの構成要素の要素分解は、検証可能なプロダクト・サービス・所産を表します。
各構成要素は、明確に定義し、責任を負う一定の実行する組織部門を割り当てます。
行き過ぎた要素分解をせず、余計な作業を入れない、しかも取りこぼしがないようにします。(100%ルール)PMBOK®Guide p.161

WBSは各プロジェクトやフェーズ(工程)に合うよう、テーラリングします。

※ローリングウェーブ計画法
通常マネジメントチームは、成果物 やサブプロジェクトが明確にされ、WBS の詳細が作成できるようになるまで待つ。
プロジェクトの初動の段階では、直近の作業は明確にし、最後に行うテストの詳細まで明確にする事はあるかもしれないが、成果物ができてからでも詳細化できるため、将来の作業に対しては、上位レベルで計画することがある。

アウトプット

スコープベースライン(WBS、WBS辞書、プロジェクトスコープ記述書)
 ⇒PMが承認します。
※WBS辞書:WBS の各構成要素について詳細を提示した文書であり、構成要素毎で作成される文書。
※計画中のパッケージ:CAより下でWPより上にある。
WBSの階層が深くなると登場する管理ポイント。

通常CA(Control Account)で進捗管理を行う。WPでは行わない。

・WBSの最下層はワークパッケージ(WP) ※アクティビティではない
40〜80hの作業量の構成要素
PMBOKが想定しているWBSは大規模であり、粒度としては粗い。
(3年〜5年くらいの長期のプロジェクトを想定。アクティビティまで定義すると管理が難しくなる。)
わかる範囲で明確にしていく。
問 WBSの基礎となるものであり、且つコスト・スケジュール・品質に関する計画策定の基礎となるのは、次の内どれですか?
ステークホルダー登録簿 /ステークホルダー特定 /要求事項 /スコープベースライン
WBSの基礎となるものであり、且つコスト・スケジュール・品質に関する計画策定の基礎になるのは「要求事項」です。

5.5スコープの妥当性確認プロセスの働き

クライアントに成果物の正式な受け入れを得るプロセスです。

インプット

・プロジェクトマネジメント計画書
・プロジェクト文書(教訓登録簿、品質報告書、要求事項文書)
検証済み成果物(品質のコントロールプロセスのアウトプット)

ツールと技法

・検査(ユーザテスト、本番環境でテストをしてもらう)・・・別名:レビュー、プロダクトレビュー、ウォークスルー
・意思決定(全員の合意を得るため)

アウトプット

・受け入れ済み成果物(検収書に印鑑を押してもらった状況、文書)
・変更要求(受け入れ拒否が発生した場合→欠陥修正のみ)
・作業パフォーマンス情報

品質のコントロール・・・【作業結果の確認】を主な関心事としている。
スコープの妥当性確認・・・【作業結果の受け入れ】を主な関心事としている。

※基本的には、品質のコントロールが先で、その後にスコープの妥当性確認だが、2つのプロセスが並行して行うこともあります。

5.6スコープのコントロールプロセス

スコープを確認し、当初の予定通り作業が進んでいるかを確認します。
※スコープだけに着目

インプット

・プロジェクトマネジメント計画書(計画値)
・作業パフォーマンスデータ(実績値)

ツールと技法

差異分析、傾向分析

アウトプット

・変更要求
・作業パフォーマンス情報

※予定通りに作業ができていなければ、変更要求(予防処置、是正処置:課題に対するアクションプラン)を提案します。
※作業パフォーマンス情報は、4.5の作業の監視コントロールに集約されます。

まとめ

  • どのように進めていくか、スコープに関する計画書を作成する。
  • ステークホルダーからの要求事項を収集、分類、まとめて、文書化する。
  • 作業と成果物を文書化して、プロジェクトスコープ記述書を作成する。
  • 成果物を元に要素分解を行い、WBSを作成する。
  • WBSはWPレベルで定義する。
  • スコープのコントロールでは、スコープに関するデータ分析、変更要求が提案される。
  • スコープの妥当性確認は、クライアントに受け入れを得るプロセス。(終盤)

今回は5章のスコープマネジメントについてまとめてみました。
「要求事項の収集」やプロジェクトスコープ記述書に含まれるものや各プロセスのツールと技法、また品質のコントロールプロセスとスコープの妥当性確認プロセスの違いについてはPMBoKを細かく見て頂くことをおすすめ致します。

以上になります。お疲れ様でした!



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