PMP PMBoK 第6版を理解する 12.調達マネジメントについて

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PMP PMBoK 第6版を理解する 11.リスクマネジメントについて

学習目標

・調達マネジメントの全体を説明できる。
・調達マネジメント計画書について説明できる。
・調達マネジメントの計画のツールと技法、アウトプットについて説明できる。
・契約タイプについて説明できる。
・調達の実行プロセスの働きやポイントについて説明できる。
・調達のコントロールプロセスの働きやポイントについて説明できる。

12.調達マネジメントの全体

調達マネジメントという知識エリアは、合意書の数分発生します。つまり、1工程の中で2社の外部業者と合意書を交わすということであれば、調達マネジメントという知識エリアは、1工程の中で2つ存在することになります。

外部業者のことを納入者と呼び、コントラクター、ベンダー、サービス・プロバイダー、サプライヤーとも呼ばれます。

12.調達マネジメントインプットツールと技法アウトプット
12.1調達マネジメントの計画・ビジネス文書
・プロジェクトマネジメント計画書
・プロジェクト文書
・組織のプロセス資産
・データ収集
・データ分析
・発注先選定基準
・会議
・調達マネジメント計画書
・調達戦略
・入札文書
・調達作業範囲記述書
・発注先選定基準
・内外製決定
・独自コスト見積り
12.2調達の実行・調達マネジメント計画書
・調達文書
・納入候補のプロポーザル
・広告
・入札説明会
・プロポーザル評価
・交渉
・選定済み納入者
・合意書
12.3調達のコントロール・プロジェクトマネジメント計画書
・プロジェクト文書
・合意書
・調達文書
・作業パフォーマンスデータ
・クレーム管理
・データ分析
・検査
・監査
・調達終結
・作業パフォーマンス情報
・変更要求

 

12.1 調達マネジメントの計画

調達に関する意思決定を文書化し、取り組み方を明確にし、納入候補を特定するプロセスです。プロジェクトチームでプロジェクトを達成するか、外部に依頼して調達ができるか判断します。

インプット

・プロジェクトマネジメント計画書
(スコープベースライン:業者さんの作業内容を決めている)
・プロジェクト文書(マイルストーンリスト:業者さんの納期)
・組織のプロセス資産:契約タイプ、契約形態について記載
※欧米型の契約形態である

定額契約(請負に近い):
プロダクト、サービスに対して一定の総額を定めます。
スコープが明確であることが前提条件。
納入者側のリスクの方が高い契約。

★定額契約の種類
1.完全定額契約(FFP:Firm Fixed Price)
 品目の価格が作業開始前に設定され、作業スコープが変更されない限り、価格が変わらないため購入者側に好まれる契約形態です。
2.定額・プラス・インセンティブフィー(FPIF:Fixed Price Incentive Fee)
支払上限額内において、パフォーマンス基準を超えた時にインセンティブが発生する形態です。インセンティブが発生するので、完全定額契約と比較すると購入者のリスクが高くなります。
3.経済価格調整付定額契約(FP-EPA:Fixed Price with Economic Price Adjustment)
支払上限額内において、インフレなどの市場・社会の動きに応じて、事前に定義した最終調整を契約価格に加えることができる形態です。コントロールが効かない経済状態から購入者と納入者の双方が保護されるとされています。


実費償還契約(準委任に近い):

 完了するのにかかった全ての正当な実コストに、納入者の利益相当分を加えた金額を納入者に支払います。契約の実行中に作業スコープが著しく変化する場合に使用します。

★実費償還契約の種類
1.コストプラス定額(固定)フィー(CPFF:Cost Plus Fixed Fee)
納入者は、引き受けた作業にかかった全コストの償還に加えて、当初コスト見積もりに一定比率を掛けた定額フィーを受け取ります。
2.コストプラスインセンティブフィー(CPIF:Cost Plus Incentive Fee)
納入者は、引き受けた作業にかかった全コストの償還に加えて、契約で定めたパフォーマンス目標を達成した場合には事前に取り決めたインセンティブフィーを受け取ります。
3.コストプラスアワードフィー(CPAF:Cost Plus Award Fee)
納入者は、引き受けた作業にかかった全コストが償還されます。報奨金(Award)は、購入者の主観的な裁量で納入者に支払われます。


T&M(タイム・アンド・マテリアル)契約(派遣契約に近い)

要因補強、専門家の調達、外部からの支援にこの契約を使います。
月または日あたりで定額契約を締結しますが、作業進行上発生した実費部分は、購入者が負担します。そのため購入者は、納入者の作業時間の管理を行うことが必要です。

★納入者側のリスクが高い契約形態の順番
1.FFP→2.FFIF→3.FP-EPA→4.T&M契約→5.CPAF→6.CPIF→7.CPFF

ツールと技法

・データ収集(市場調査):業界の動向、業者のスキル
・データ分析
 –内外製分析:内製なのか外製なのか分析します。
 –発注先選定分析:選定方法を分析します。

アウトプット

・調達マネジメント計画書:調達の取り組み方を定義した文書。

-主要な調達活動とタイムテーブル
-契約のマネジメントに使用する調達評価メトリックス
-計画した調達に影響を及ぼす制約条件と前提条件
-独自見積りを使用するか、また独自見積りが評価基準として必要かどうかの決定
などが計画書に含まれます。



調達戦略
内外製分析が完了した後、実施方法、契約タイプの内容、調達フェーズを通してどのように調達を進めるか決定します。

入札文書:納入者に条件を提示するための文書。
情報提供依頼書(RFI), 入札招請書(IFB), 提案依頼書(RFP), 見積依頼書(RFQ)があり、納入候補者からプロポーザルを得ることを目的としています。

調達作業範囲記述書(SOW):業者さんの作業範囲を記載した文書。
スコープベースラインに基づいて、契約に含めるスコープの部分だけを定義し、納入候補者の供給能力があるか判断できるように、仕様、必要量、品質レベル、パフォーマンスデータ、実施期間、作業場所また付託条項(TOR)などの詳細事項を含めて記載します。

発注先選定基準:納入者からのプロポーザルを評価して、納入者を選定する基準。
選定基準には、達成能力や力量、納期、技術的な専門知識と手法、マネジメント経験、現地調達などがあり、重み付けによる加重評価スコアでランク付けするために使用。

内外製決定
内外製分析をした結果、プロジェクトチームで達成するか、外部の業者から購入するか決定します。

独自見積り
納入候補者が提出した見積もりの正確性を測り、ベンチマークとして使用することを目的として独自に見積りを行います。

12.2 調達の実行

調達マネジメントの計画プロセスで作成された調達文書をもとに、公告・入札説明会を行い、納入候補からプロポーザルを入手します。
プロポーザル評価を行い、調達交渉をした後、納入者を特定して、契約を締結するプロセスです。(契約を結ぶまでがゴール)

★流れ
インプット(調達文書)→ツールと技法(1.広告, 2.入札説明会)→インプット(納入候補のプロポーザル)→ツールと技法(3.プロポーザル評価, 4.調達交渉)→アウトプット(合意書)

インプット

・プロジェクトマネジメント計画書(コストベースライン)
調達文書(入札文書、調達作業範囲記述書、独自見積もり、発注先選定基準):納入者に条件を提示するための文書
・プロジェクト文書(マイルストーンリスト・・業者さんの納期)
納入候補のプロポーザル:見積書、技術提案書など調達文書に対する納入候補者の回答
・組織のプロセス資産(契約タイプ)

ツールと技法

1.公告:納入候補の一覧表を拡充することを目的として、一般刊行物に公告を掲載。
2.入札説明会:プロポーザル提出に先立ってすべての納入候補を対象に行う会議。
※外部業者からRFPを入手。

・データ分析
3.プロポーザル評価:納入候補からのプロポーザルを評価。
重み付け法:数値化した評価基準をまとめて、各納入候補者の総得点を算出して、比較する方法。

・人間関係とチームに関するスキル
4.調達交渉:契約締結に先立って購入者と納入者の双方の合意が得られるように交渉。

アウトプット

合意書 PMBOK®Guidep.489
【契約とは、納入者には特定のプロダクト、サービス、あるいは所産の提供を義務付け、購入者には支払いの義務を負わせる、相互に拘束力を持つ合意である】

-調達作業範囲記述書、または主要な成果物
-スケジュール。
-パフォーマンス報告
-価格と支払い条件
-裁判外紛争解決手続(ADR)
示談と訴訟の間。仲裁の1つとされ、裁判をしないことを目的とします。

 

問.ベンダーとの契約は完了したが、どうやらベンダーがこちらの要求事項を十分理解していないようである。PMは何を参照するか?
(RFP/SOW/スコープ記述書/契約書)
⇒【解説】契約書には要求事項(調達作業範囲記述書または主要な成果物)に関する記述もあるため【契約書(合意書)】が妥当だと思います。

12.3 調達のコントロール

調達先との関係をマネジメントして、契約上のパフォーマンスを監視し、適切な変更と是正を行い、契約を終結するプロセスです。
契約書通りに正しく作業が行われていたのか、外部業者さんの作業状況について確認します。

インプット

・合意書(契約書):契約条件が満たされていることを確認するために使用します。
・作業パフォーマンスデータ:納入者の作業に関する作業実績データです。

ツールと技法

・データ分析(パフォーマンスレビュー)
業者さんが出してきた成果物が契約書通りのものなのか確認し、契約を満たしていなければ、契約不履行となり、契約打ち切りの判断材料となります。

検査:作業プロセスが契約書通りに行われているか確認します。
成果物の簡単なレビューや、作業自体の実際の物理的なレビューを含みます。

クレーム管理:業者さんと揉め事があった場合、当事者間で解決します。
※解決できない場合は、ADRの手順に従って処理。

監査:調達のプロセスが適正だったか、母体組織の第三者が介入してチェック。

問.あるベンダーと契約締結後、成果物のリリースに遅延する評判があることがわかった。PMはなにをすべきか?
(FFP 契約に変更/契約を打ち切る/定期的にパフォーマンスレビューを実施し、進捗状況を確認/予備設定の予算を確保)
⇒【解説】本問題は、調達のコントロールプロセスのツールと技法である、データ分析内の【パフォーマンスレビュー】が内容として近いと思います。

アウトプット

・調達終結(終結済み調達)
契約が完了したことを正式な書面により納入者に通知した結果です。
・作業パフォーマンス情報:納入者の作業結果です。(報告結果を含む)
・変更要求:相手側が契約に対する解釈上の変更を含めた変更要求です。

まとめ

  • 調達マネジメントの知識エリアは、合意書の数分発生します。
  • 契約タイプには、定額契約、実費償還契約、T&M契約がある。
  • 定額契約の種類には、FFP、FFIF、FP-EPAがある。
  • 実費償還契約の種類には、CPFF、CPIF、CPAFがある。
  • 調達の実行では、調達文書を元に広告、入札説明会を行い、納入候補のプロポーザルを得る。
  • 購入者はプロポーザル評価、調達交渉を行い、最終的に合意書を得る。
  • 調達のコントロールでは、調達先との関係をマネジメントして契約上のパフォーマンスを監視し、適切な変更と是正を行い、契約を終結する(調達終結)。
  • 契約書通りに正しく作業が行われていたのか検査を行い、外部業者さんの作業状況について確認する。
  • クレーム管理では、業者との揉め事を当事者間で解決するが、解決できない場合、ADRの手順に従って処理される。

調達マネジメントについて見ていきました。契約タイプについては、契約の種類だけでなく、インセンティブが発生するときの金額の計算方法についても確認しておくとよいかと思います。調達の実行プロセスでは、通常のプロセスと異なるため、流れを記載致しました。

以上になります。お疲れ様でした!


試験対策用として以下の記事を用意しました。
PMP試験で実際に出題された問題の紹介と対策【PMBoK第6版】